Trton2Light インプレッション

2015X-alpsアスリートにNOVAから用意された翼がTriton2Light。XSサイズはCCCカテゴリーの認証機でありますが、軽量グライダーを求めるクロスカントリーパイロットのニーズには答えるのか。そんな疑問を持ちながら、冬のエアパークCooでテストをおこないました。

まず、パックされたグライダーは当然小さく軽い!3.4kgというグライダー自重はHike &Flyを求めるパイロットを十分に満足させるスペックです。Triton2に比べSサイズで1.55kgも軽量化に成功しています。今回は、最大荷重90kgのXSサイズを新しい軽量ハーネス「エムシライト」との組み合わせで、装備重量75kgでフライトします。ちなみに宮田のパイロット自重は65kg。



グライダーを広げてみると、ベースとなっているTriton2とはセール生地だけではなく、細部が変更されていることに気づきます。まずはトレーディングエッジのブレークラインのアタッチメントが追加されています。これで、レイズアップ時の不意なライン破断にも、迅速に対応することができます。また、ライザーのアクセルプーリーの幅が約20㎝と大きく増加しています。CCCレギュレーションを最大限に使ったスピードが使えるようになっているようです。

テイクオフ
シンプルなライザーは握りやすく、厚手のグローブを使っていましたが、スムーズにテイクオフ準備が可能となっています。そして、軽量ウィングの最大のメリットでもあるインフレーションが簡単!無風はもちろんですが、弱いフォローでも簡単にライズアップに移行していきます。実測アスペクト6.4のハイアスペクトのため、わずかにでも向かい風なのであれば、リバーステイクオフにより、グライダーの形状を維持しながらライズアップされることをお勧めします。


ジェネラルフィーリング
離陸後、パイロットの荷重がグライダーに掛かった瞬間から、滑るようにグライディングする感覚に驚かされます。グライダー最大荷重まではまだ15kgもあるにもかかわらず、まるで上限で乗っているような加速感と旋回特性を感じることができました。特に、ブレークコードを引いた際の翼のしっかりとしたホールド感は素晴らしく、荒れた空域に入った際にパイロットに安心感を与えてくれるでしょう。一般的にハイアスペクトな軽量グライダーはブレークコードを引いてもフニャリとしたブレークプレッシャーで、翼自体が柔らかく感じることが多くありますが、このTriton2lightは違います。引き始めから直ぐにブレーク効果は始まり、的確にグライダーの操縦にリンクしていきます。これならアルプスのリーサイドでもアグレッシブに飛ぶことができそうです。


サーマル内での上昇性能は、NOVAらしい素晴らしいものがあります。装備重量75kgと設定荷重に対しては軽めだからでしょうか、サーマル内で同じ上昇で飛べるグライダーはいません。冬らしい強い逆転層があるトリッキーなコンディションでしたが、誰よりも先に抜けていつも高い位置に上がってしまうのです。これは凄い!

アクセル
20㎝あるアクセルプーリー幅を最大限に使ってみました。ハーネス内のスピードバーは3段式でないと踏み切れないほどのストロークですが、フルアクセルでGPS速度で+13kg/hと十分な加速域でした。一般パイロットが踏み切ることはないかと思いますが、レースではこのスピードは最大の武器となるでしょう。

降下手段
ビックイヤーは潰れた翼端も安定しており、安心してお勧めできる有効な効果手段と言えます。Bストールも可能ですが、Bライザーをゆっくりとやや内側に引き込まないと、ストール後、翼端が前方に走りクラバットを誘発する危険があります。クラバットしてしまっても、大きなストロークを使ったポンピング操作で回復させることはできました。翼端がスタックしない。これも硬いものが使われていない、軽量生地のメリットなのでしょう。

サマリー
他のEN-D機との徹底した比較は行いませんでしたが、75kgという低い荷重でのフライトにはストレスはなく、むしろ一般的なパイロットにはちょうど良い感じで、十分なパフォーマンスでした。もちろん90kgに近い上限荷重で飛べば、その特性はよりハイパフォーマンスになるのでしょうが、一般的ではありません。競技会に参加するパイロットも唸らせるパフォーマンスに、ずばり、軽量な女子選手に乗っていただきたい翼と感じました。XSサイズのグライダーは同じグライダーにおいても大きいサイズよりもパフォーマンスが落ちる!なんていうことが一般に言われますが、XSサイズにこそ、軽量ウイングが当てはまるように感じさられました。

昨今の軽量ハーネスと組み合わせ、XCフライトを楽しみたいパイロットには絶対おすすめの翼です。そして、軽量な女子コンペパイロットにもぜひ試してもらいたい!久しぶりに熱くさせてくれるグライダーでした。


投稿者名 宮田 歩 投稿日時 2015年12月17日 | Permalink